自分で自分をリストラする:地域社会学を教えなくなります

秋学期の学部の講義「地域社会学」の第1回の授業が終わった。この数年、五十嵐泰正先生と編んだ『よくわかる都市社会学』(2013,ミネルヴァ書房)を使って都市社会学の話をしている。ガイダンスが予定より早く終わったので、再来年度からこの科目を「グローバル社会のローカリティ」に名称変更する予定であることを話した。もちろん目の前の受講生たちには関係のないことではある。でも、自分が四半世紀それなりに力を入れて勉強してきた「地域社会学」という学問分野がグローバル化のなかでまったく時代遅れになってしまい、一から新しいことを始めなければならないと考えるようになったことを、彼女ら彼らに話してみたいと思ったのである。彼女ら彼らも将来そんな判断をすることがきっとあるにちがいないから。

話していて、ふと「自分で自分をリストラする」という言葉が思いついた。前の大学で組織からリストラされたときは怒りしか湧いてこなかったが、今私は、この言葉を口に出して、楽しい気持ちになっている。さらに想像は広がる。「いつか私が退職したら、次は、日本人でも、男でも、健常者でもない新しい教師が、私の話と全く違う話をするでしょう」。これこそ未来の可能性というものだ。

最近私の職場では、ベビーブーマー世代の同僚たちが退職にかかってきて、自分の専門分野やポストの存続に固執して、若い同僚たちに干渉や恫喝を行うことがしばしば見られる。全く「構造的に」馬鹿馬鹿しい事態だ。というのは、彼女ら彼らの専門分野もポストも、ベビーブームと高度経済成長の臨時収入に過ぎないのだから。彼女ら彼らの醜態を見るにつけ、「自分で自分をリストラする」私はちょっとイケてるかもしれない、とうぬぼれている。

中筋 直哉 について

法政大学社会学部教授。1966年神戸市生まれ。
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