ののちゃんのお父さんが造っている艦:朝日新聞朝刊の全面広告

今朝11月14日の朝日新聞朝刊の中程に、2面を使った全面広告を三井造船が載せている。百周年で社名を変えるというのが趣旨だが、面白いことにいしいひさいちが四コマ漫画を特別寄稿している。朝日新聞朝刊の連載漫画『ののちゃん』の舞台が「たまのの市」で、お父さんの勤め先が造船所であることは、最近ひんぱんに描かれてきたが、この特別寄稿では、彼の一族が三井造船玉野造船所で働いていることを自ら明らかにしている。ファンには自明のことかもしれないが、私は今朝はじめて、ののちゃんが彼の自画像で、『ののちゃん』が彼の家族の物語であることを知った。『がんばれタブチ君!』以来、プライベートを明かすことが少なかった彼なのに、この寄稿では全面開放していることは、やはりこの国において家族の力には抗えないことを示しているのかもしれない。

記事の中心は「さかなクン」と社長の対談記事、聞き手は女性記者となれば完全にソフトなイメージなのだが、私の目は右面下の「404」と大書されたバルバスバウの灰色の艦の進水式の写真に釘付けになった。キャプションは「造船で培った技術でさらなる発展をめざす」とあるが、本文のどこにもこの艦が何であり、どうキャプションに見合っているのか、書かれていない。そもそもこの写真は誰に向けて貼り付けられているのか。長年の愛読者ではあるけれども、私が「朝日はぜったい信用できない」と思っているのは、まさにこうした狡猾さ(卑屈さ)なのである。

ここからはウェブの出番だ。ウェブで検索すればマスメディアが頬被りしていることは全て露わになる。「404」は艤装中の新造潜水母艦(と海上自衛隊では呼ばないが)「ちよだ」で、海上自衛隊は2つの潜水艦隊に合わせて2隻の潜水母艦を持ち、さらに「いずも」など最近の巨艦ブーム(次は満載1万トン級で、名も大和、武蔵か?)で石川島播磨(今はそう言わない)に後れをとった三菱が、財閥仲間の三井と組んで受注の巻き返しを図っていると書かれている。昔の軍縮条約ではないけれど、「いずも」とちがって補助艦は私たち納税者から見えにくい。もちろん原子力でない潜水艦を持てば母艦は不可欠だ。しかし戦争を放棄した国に潜水艦は必要か。マンガじゃあるまいし・・・。

さて潜水母艦の仕事は補給と救難で、とくに深海で潰れた艦からの乗員救助は至難の業だろう。そこでもう一度広告を見直すと、海底調査の「チームクロシオ」の宣伝があった。だからキャプションは一応「軍需から民生へ」と理解してよいのかもしれない。

ののちゃんのお父さんは、小さな貨物船のの受注と資材を調達する仕事をしているようである。同僚は名前から在日朝鮮韓国人のようである。しかし、実際には軍艦を(も)造っているのだ。『ののちゃん』は、その意味でも(他にも色々あるのだが)少し悲しいファンタジーであるように、私には思われた。

中筋 直哉 について

法政大学社会学部教授。1966年神戸市生まれ。
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ののちゃんのお父さんが造っている艦:朝日新聞朝刊の全面広告 への1件のフィードバック

  1. 中筋 直哉 のコメント:

    来日したトランプ大統領が、なぜ「いずも」に乗らなかったのか。私たちはよく考えてみるべきかもしれない。時間がなかったというのは、一応の気遣いと言うべきだろう。「思い上がるなよ」ということだろう。

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