おもしろきこともなき世をおもしろく:来年の抱負

昔々学部学生の頃、大学院進学希望の同級生たちとE.デュルケムの『社会学的方法の規準』を原文で読む読書会をはじめた。もちろん岩波文庫の宮島喬訳も、図書館で探せば田辺寿利訳もあったから(折原先生オススメ)、原文は傍らに置いてときどき見るくらいのユルい読書会だった。その時の仲間は、私以外は皆個性的かつ生産的な研究者になった。

さて、毎回楽しくやっていたのだが、あるとき私たちの兄貴分だった大学院生がやってきて、私に「何でそんなつまらないことをするのかな」と言った。いきなりの冷や水に私は返す言葉がなかった。そのときの彼の顔を今も思い出すことができる。後で彼の専門がM.ウェーバーだからかななどと考えてみたが、やはり分からない。そのままにしたまま読書会は続き、私たちの過半は大学院に進み(進まなかった人も後に研究者の途に進んだ)、読書会は新しいメンバーを加えて、鈴村興太郎『経済計画理論』を読んだところで終わった。

最近、その先輩がある学術出版社のPR誌にウェーバー論を連載しているのを読んで、以上のことを思い出した。そのウェーバー論は、今の私からすれば「何でそんなつまらないことをするのかな」だったからである。解釈について自由でもなく、議論について対話的でもないから、私を含め不特定多数の他人が関わる余地がない。毎回さびしい気持ちになって、その雑誌を閉じた。

では、どうすればつまらなくない、面白い本の読み方、世界の読み方ができるのか。そのことを来年の抱負にしたい。そのことを初心に返ってデュルケムを通して考えてみたい。というわけで、年末にSteven Lukes の “Emile Durkheim” のペーパーバックを入手した。山梨大学時代に読みかけて放り出した本に再挑戦である。

今年1年読んでいただきありがとうございました。来年も少しでも面白い勉強をして、ここで報告したいと思います。引き続きよろしくお願いいたします。

中筋 直哉 について

法政大学社会学部教授。1966年神戸市生まれ。
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