名古屋メシの未踏峰を1つ登頂:鮒味噌を食べる

愛知県に住んで20年、名古屋に住んで13年、そろそろ名古屋メシも食べ尽くした感があるが、まだ1つ未踏峰があった。鮒味噌である。子持ちの寒ブナを甘辛い豆味噌ベースの汁で大豆と一緒に煮込んだもので、たぶん木曽三川下流域の家庭料理なのだろう。辰巳芳子『ことことふっくら豆料理』(1991,農文協)も、津島市の旧家に学んだレシピを掲載している。近所のスーパーに年末あたりから並ぶのだが、何せ1匹1,300円は高い。連れ合いと買い物に行くときは、恐妻家としてはとても怖くて言い出せなかったが、1人で買い物に行ったとき、思い切って買ってみた。

味噌カツの味噌ダレは甘くない方がいいように思うが、この鮒味噌は甘い味噌味がよく合っていて、噂通り非常に美味しい。とくに腹子が美味しい。背骨も頭もすべて食べられる。周りで柔らかく煮えた大豆もまた美味しい。私としては佐久鯉の甘露煮や琵琶湖の鮒鮓より好みかもしれない。私は下町育ちで、父が釣りをしなかったから、鮒や鯉など川魚には縁がない。だからとりわけ珍しいのかもしれない。愛知県人の連れ合いは「私は鮒はいいわ」とつれなかった。ただ、私もやはり釣りはしないので、自分で作るのは無理かもしれない。スズキやタイで代用できるかもしれないが、腹子が難しいだろう。当分は一冬1匹を楽しみにしよう。

この先名古屋メシの未踏峰でより難関なのはコノワタである。なぜコノワタが全国に知られた珍味なのかをプロト工業化に関する講義で語ることはあっても、食べたことはない。小さなビンで5千円。ハードルがとても高い。

ちなみに、今日のニュースの豆味噌の地域ブランド騒動。私は反岡崎派である。小さな味噌蔵も含めて皆で共栄すべきなのに、自分たちだけの暖簾にこだわった当然の報いだと思っている。

中筋 直哉 について

法政大学社会学部教授。1966年神戸市生まれ。
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