裏山の火葬場で

休日に、子供と散歩に出た。裏山の裾の小さな渓を遡ると、その先は市営の大きな霊園で、その一番高いところは裏山よりも高く、かなり見晴らしがいい。深く考えずに墓の間を縫って渓に下りると、そこは火葬場の裏だった。火葬場の表は何度か行くことがあっても、裏を見るのははじめてだ。焼却室毎に排気パイプがくねくねと出ていて、その何本かが束ねられてより太い排気筒になっている。途中に集塵や脱臭の装置が付いているのだろうが、熱までは取りきらないので、排気筒の先には陽炎が立ち、辺り一帯がほのかに暖かい。臭いはないはずだが、気のせいか肉の焼ける臭いがする。何よりごうごうとボイラーの音が絶え間ない。子供は怖がっていたが、その即物性は子供が感じたのとは違う怖さを感じさせる。でも、都市で生きるということはそんなものだという気もするのである。

中筋 直哉 について

法政大学社会学部教授。1966年神戸市生まれ。
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