春雨にしっぽり濡るる鶯の:続々長崎旅行

不真面目な理由は、初恋の人に会いに行く、といった艶種ではもちろんなくて、食いしん坊に決まっている。ウチワエビは偶然のご褒美で、本来の目的は市内丸山町の料亭「花月」で卓袱(しっぽく)料理を食べることだった。といっても、フルコースは老化したお腹も財布もとても持たないので、昼の弁当(花御膳)である。鯛の「御鰭」(おひれ=吸い物)に始まり汁粉で終わる、大満足の食事。とくに卓袱の1品の貝柱の燻製が美味しかった(たぶん本来はアワビ)。

「花月」といえば、下関「春帆楼」と並んで(さらにもう閉じてしまった鹿児島「重富荘」も加えて)日本史の教科書に載ってもいいような幕末維新期の政治・外交の舞台である。予約の電話を入れると、「はじめてでしたら、少し早めにお越しください。お座敷をご案内します」ということで、2階の大広間を見学した。谷間に建つ2階が崖上の庭に面した造りで非常に明るい。なぜか床柱に刀傷が4ヶ所。「坂本龍馬が傷つけたと伝わっております」「ハハァ・・・交渉決裂という感じですか?」「いえいえ、ただお酒に酔ってつけられたとです」子ども「何だ、『銀魂』と変わらんじゃん」。写真は、1階の私たちの座敷で、龍馬の狼藉を再現してみた!。ただし病気をしてからの私は、お酒は飲めません。

ついでに、ここで作られたという端唄「春雨」を歌ってみたかったが、家族にガンムシされて断念。「春雨に、しっぽり濡るる鶯の・・・」。これで長崎旅行はおしまい。

中筋 直哉 について

法政大学社会学部教授。1966年神戸市生まれ。
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