車中で開く新聞は:新幹線の社会学9

夕方東京発の下り東海道新幹線で、前の席に座った中年の男性が2人も『東京スポーツ』を開いたので、急に懐かしくなった。『東スポ』まだあったんだ。昔は「〇〇は△△確定・・・か?」といった危ういゴシップ記事で、「ゴシップといえば『東スポ』」というくらい人気があったと思うけれど、今はどうなんだろう。『日刊ゲンダイ』にしろ(「やる気マンマン」)、『夕刊フジ』にしろ、今どき、最終面に劣情的な写真や絵(イラストではありません!)をデカデカと載せるようなタブロイド紙に命はあるのだろうか。また、これもハズキルーペで読むことになるのだろうか。

いや、そんな話がしたいのではなくて、東海道新幹線のなかで読む新聞は何ですか?、という話がしたいのである。そんなの『ニッケイ』に決まっている、のだろうか。あるいは上り名古屋発に限っては『中日新聞』なのだろうか。私の偏った経験によれば、意外と読まれているのは『聖教新聞』である。

私にとって、これは1つの謎である。『聖教新聞』は駅売りしていないはずだから、購読者が自宅から持ち込んだことになるのだが、自宅で講読しているのなら自宅で読めばいいだろう。読んでいるのは初老の夫婦連れの夫の方が多く、忙しくて読む時間がない風には見えない。ここからはまったく私の妄想で、「宣伝のために公共の場で読みましょう」みたいなススメがあるのではないか。もっとも目の前で読まれても、面白そうだから帰りにキヨスクで買って帰ろう、とはならないだろうが・・・。

比べてはいけないが、私たちの世代くらいまではどうしても比べてしまう『しんぶん赤旗』を読んでいる人を見たことはない。もし私の妄想が当たっているなら、『赤旗』も同じようにやればいいと思う。そうでもしないと、『聖教新聞』以上に歴史ある『赤旗』の存在を誰も知らなくなってしまう。

ちなみに名古屋の地下鉄車中では、英字紙を読んでいる人がけっこういる。グローバル化を戦う、ものづくりナゴヤの苦しみを感じさせる光景だ。

中筋 直哉 について

法政大学社会学部教授。1966年神戸市生まれ。
カテゴリー: 新企画「新幹線の社会学」, 見聞録 パーマリンク

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