思い出の歴史家:直木孝次郎氏の訃報に接して

日曜の朝刊に大阪市立大学名誉教授の直木孝次郎氏の訃報が載っていた。享年百。古代史が専門でも趣味でもない私が彼の名を知っているのは、ひとえに小学生の頃欠かさず見ていたNHKのテレビ番組『歴史への招待』による。他にもたくさんのゲストが出ていたはずなのに、今思い出せるのは、常連の樋口清之氏を除けば、直木氏と黒メガネに黒スーツの黒岩重吾氏ぐらいだ。

なぜ覚えているかというと、その語り口がつねに明快だったからだ、子供だから論理的だとか、実証的だとかは分からなかったけれどいつも筋が通っていて、そのうえ挑戦的だった。またその語り口に親しみも感じたのだが、訃報には神戸生まれとあって、納得した。関西弁なんてどこも同じ、ではなくて、大阪には大阪のことばが、神戸には神戸のことばがあるのだ。

訃報には、直木氏が朝日歌壇に入選した歌も引かれている。「特攻は命じた者は安全で命じられたる者だけが死ぬ」。この明快さとおかしみと悲しみ。特攻ではないけれど、同じように命じられた者として人生を壊した私には、心にしみる歌である。しかし、この歌の真意は、「誰からも命じられてはいけない」ということだったのではないだろうか。合掌。

中筋 直哉 について

法政大学社会学部教授。1966年神戸市生まれ。
カテゴリー: 尊敬する先輩たち, 見聞録 パーマリンク

2 Responses to 思い出の歴史家:直木孝次郎氏の訃報に接して

  1. omachi のコメント:

    歴史探偵の気分になれるウェブ小説を知ってますか。 グーグルやスマホで「北円堂の秘密」とネット検索するとヒットし、小一時間で読めます。北円堂は古都奈良・興福寺の八角円堂です。 その1からラストまで無料です。夢殿と同じ八角形の北円堂を知らない人が多いですね。順に読めば歴史の扉が開き感動に包まれます。重複、 既読ならご免なさい。お仕事のリフレッシュや脳トレにも最適です。物語が観光地に絡むと興味が倍増します。平城京遷都を主導した聖武天皇の外祖父が登場します。古代の政治家の小説です。気が向いたらお読み下さいませ。(奈良のはじまりの歴史は面白いです。日本史の要ですね。)

    読み通すには一頑張りが必要かも。
    読めば日本史の盲点に気付くでしょう。
    ネット小説も面白いです。

    • 中筋 直哉 のコメント:

      omachiさん、コメントありがとうございます。興福寺の歴史、詳しく調べるといろいろ想像力が搔き立てられそうですね。

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