死んだ宝物(ヴァイグア):みんぱくを訪ねて2

さあさあお立ち会い。文化人類学を学んだ人なら知らない人はいない、ニューギニア・トロブリアンド諸島のクラ交換の宝物(ヴァイグア)、ソウラヴァ(左「上」ウミギクガイ製のビーズの女性用首飾り)とムワリ(右イモガイ製の男性用腕輪)だよ。

みんぱくの新展示の第1室はオセアニアで、お得意のアウトリガーカヌーの伝統航法の解説がメインだが、隅っこにこれらの宝物も展示されている。ただしB.マリノフスキの『西太平洋のアルゴノーツ(遠洋航海者たち)』への言及はない。ちなみに、オーストラリア先住民(アボリジニ)の展示にはブーメランはやたらにあるけれど、C.レヴィ=ストロースの『野生の思考』でおなじみのチューリンガ(部族の想像的歴史を刻んだ石棒)はない。

しかし、これは死んだ宝物である。なぜなら、マリノフスキが正しいのなら、これらは人びとの間を冒険航海によって渡っていき、手に入れた英雄の伝説が堆積してこその宝物なのだ。せっかく日本に来ても、博物館の陳列ケースに閉じ込められては意味がない。すぐに誰かに渡さなければ(正確に言うと、決まったクラ仲間が取りに来なければ)。

勝手な妄想。ソウラヴァは大英博物館にとられ、ムワリはニューヨーク自然史博物館にとられて、それぞれで若き日内蒙古を縦横に駈けたグレート梅棹首長の名とともに展示される。かわりに大英博物館からそれこそマリノフスキの持ち帰ったムワリが来て、ニューヨーク自然史博物館からM.ミードのコレクションのソウラヴァが来る。それでこそ、クラ交換だ。

話は変わるが、今流行の太陽の塔、いつみても昔の安いオチョーシに見えるのは私だけか。

中筋 直哉 について

法政大学社会学部教授。1966年神戸市生まれ。
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2 Responses to 死んだ宝物(ヴァイグア):みんぱくを訪ねて2

  1. かほう鳥 のコメント:

     かほう鳥です。こんにちは*** 
     民族?民俗?民属?泯ゾク? そんな看板は関係なく博物館の展示物とは、私のような者でも “へーえ。”と感心したり 他の誰かに全く別の視点から捉えられたりすることが多々ある品々だと思います。一番は幼い子供たちと感じますが。
     品々を‘’死んだ‘’との表現。私は嫌ですし少し違う気もします。兎に角ですねぇ‥
     「けしから~んっ!」といふところでせうか。
     若い人達、学生さん達には現実の博物館とか資料館とかへ,行って・楽しんで(学生さんは考えて?)親しんで欲しいと思う私です。
     

    • 中筋 直哉 のコメント:

      かほう鳥さん、コメントありがとうございます。たしかに、これはこう見るべきだ、みたいな押しつけはよくないですよね。小さな子どもたちが感じること、いつか大きな花を咲かせるかもしれません。「死んだ宝物」、もしもう一度別のかたちで交換されるなら眠りから覚めるわけですから、「眠れる宝物」といった方がよかったですかね。

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