国立コンブ研究所:大石圭一『昆布の道』(1987,第一書房)を読む

わが家の出汁昆布はお手軽な日高。バブルの頃実家が贈答でもらっていた、『五辻』の羅臼昆布の黄金の色と味を思い出しながら、「まあ、日高は日高なりに」と使っている。この間ふと安売りしていた山出しを買って使ってみた。結果は、私としては五分五分。出汁はやはり山出しの方がいいように思うが、煮出した後の昆布そのものは(食うなよ!)、日高の方がしっかりしていて食べよい。

同じ昆布でもずいぶん違うのだなと興味を覚えて、地元の図書館で大石圭一『昆布の道』(1987,第一書房)を借りてきて読んでみた。著者は函館生まれ、京大農学部卒の北大水産学部教授(当時)。前半は生物学、水産学的な研究、後半は干昆布をめぐる北方交流史で、広義の今西錦司学派なのかなと思う。前半を読むと、山出し(マコンブ)、日高(ミツイシ)、釧路室(ナガコンブ、食用)、羅臼(エナガオニコンブ)、利尻(リシリ)が、種自体が違っていたり、種は同じでも生態がちがうために商品としては違っていたりすることが分かる。さらにこうしたコンブの分布が親潮と黒潮の境目の複雑な入り組みに従っていることも分かる。

入り組みの境目を知るのに絶好の場所が室蘭の地球岬で、そこに北海道大学海藻研究所があると書いてある。そんなマニアックな国立の研究所があったのかと驚いて、今の北大のホームページを見ると、さすがに今は「北海道大学北方生物圏フィールド科学センター室蘭臨海実験所」という、長ったらしく訳の分からん名前になっている。しかし、こんなマニアックな施設をいくつも持っていては、「独立」法人たる北大の経営が苦しいのもむべなるかな。でもがんばれ、北大。コンブは人間にもラッコにもエゾバフンウニにも役に立つぞ。

後半の北方交流史は、今でこそうちの文学部の小口雅史先生はじめ、考古学的な成果を踏まえ、この30年で著しく研究が進んだ分野だが、87年当時は先駆的な研究だったのではないか。なぜ沖縄で切り昆布の炒め物がよく食べられるのか、なぜ富山で塩昆布がよく食べられるのか。この本を読むとよく分かる。

学生には、宮内泰介先生の『かつお節と日本人』(2013,岩波新書)と一緒に薦めてみよう。

中筋 直哉 について

法政大学社会学部教授。1966年神戸市生まれ。
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