NHKのおっさん旅情番組いまむかし:『呑み鉄本線・日本旅』を見ながら

とくにしなければならないことがない休日の午後、溜まったビデオ録画でも見るか、というわけで、子どもとBSプレミアム『六角精児の呑み鉄本線・日本旅 石北本線を呑む』を見る。誘うと一緒に見てくれるのは、きっとうつ病のお父さんがこのテレビを見ているときは一番のんびりしているからだろう。お父さんはもう酒を呑めなくなってしまったし、たぶんひとりで汽車旅をすることもないだろうが・・・。

「六角さんが廃線歩きをしている名寄本線に、学生の頃中湧別まで乗ってね。浜湧別までの盲腸線を往復した後、湧網線(ATOKが変換しない)で網走まで行ったんだ、サロマ湖が寂しくてね」などと、おっさんの昔話を大人しく聞いている子ども。

この番組、だいたい見ているのだが、いつも子どもの頃見た別の番組を思い出す。番組名は忘れてしまったが、たぶん『昼のプレゼント』の特集だったような。やはり酒呑みのおっさんがひとり旅をする内容で、ただ昔のNHKなので呑みのシーンはほとんどなかった。旅するおっさんとは漫画家の滝田ゆうだった。あの番組と流れる時間と背景の空間が似通っているような気がするのは私だけだろうか。

滝田ゆうは私の好きな漫画家で、NHKの取材旅行のことは『泥鰌庵閑話』(ちくま文庫)のそこここに出てくる。たぶん酒のせいで早くに死んでしまった。こうの史代が出てきたとき、あれ、滝田ゆうの雰囲気・・・と思ったのは私だけかな。『この世界の片隅に』もいいかもしれないけど、戦中マンガと言えば『寺島町奇譚』(ちくま文庫)でしょう。最終話の東京大空襲の圧倒的な描写、何度読んでも涙が出てくる。

今でも国立に行くと思い出す。国立の作家と言えば大方は山口瞳なのだろうが、私にとっては富士見台団地の滝田ゆうなのである。

中筋 直哉 について

法政大学社会学部教授。1966年神戸市生まれ。
カテゴリー: 未分類, 東京漂流, 見聞録 パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください