最後のウィーン三羽烏:ピアニスト、バドゥラ=スコダの訃報

金曜日の朝刊にピアニスト、パウル・バドゥラ=スコダの訃報が載っていた。享年91。先にシューベルトのピアノソナタ全集にはまっていると書いて、その後ベートーヴェンのピアノソナタの弾き方の本を読んでみようかなと思っていたところだった(もちろんエアーですよ)。

私のCDコレクションには、彼のディスクはシューベルト以外には1点しかない。それはモーツァルトのヴァイオリンソナタ選集で、若い頃にオイストラフの伴奏を務めたものだ。ところが、この演奏が実につまらなくて、私はながく彼を好んでいなかった。聞く度に誰か他の人が弾いてくれないかな、と思っていた。

それが、シューベルトの方は全然ちがい、一音一音よくよく考えた感じがあって、にもかかわらず自然に流れていく。弾いている当時のフォルテピアノ(ペダルでシンバルが鳴るものある)も彼が収集したものだそうだ。

記事には「20代でフルトヴェングラーやカラヤンに絶賛され」「品格ある正統的なスタイルで演奏」「グルダやデームスとともに『ウィーンの三羽烏』と呼ばれた」と,ひどく薄っぺらな世評が引かれている。私は、そんな風に評され続けてきた彼の人生航路を想像してしまう。

私がクラシックを囓りはじめた1980年前後は、圧倒的にグルダが人気で、デームスはバリトンのフィッシャー=ディースカウの伴奏者程度の取り扱いだった。スコダに至っては、まったく消えていた。今グルダを聞いている人はいるだろうか。デームスのシューマン全集を聞いている人はいても(私は持っていない)。

薄っぺらい世評と分厚い演奏歴の落差、これはカラヤンに代表される20世紀のクラシック音楽の宿命だったと思うが、でもそれはクラシック音楽だけのことだろうか。そして21世紀、薄っぺらい世評の時代は終わったと思いたい。

中筋 直哉 について

法政大学社会学部教授。1966年神戸市生まれ。
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