「新幹線の社会学」終了します

出版社の方と雑談をしていたとき、つい「これだけ新幹線に乗っているのだから、『新幹線の社会学』が書けますね」と言った。言ったついでに、このブログで「新幹線の社会学」と名付けたシリーズを不定期で書き始めた。

東海道新幹線の、名古屋東京(新横浜)間を「のぞみ」で往復しているだけで「新幹線の社会学」もないものだが、それまでの経験も含めて色々気づいたこと、考えたことを書き継いでいけるのではないかと思った。何より、乗っているときに見聞きすることが、どれも面白かったのである。

しかし病気をしてから、それまで週2往復だった(子どもが小さい頃は、3往復することも多かった)のを1往復(プラス不定期1往復)に減らした上、乗る列車を上りも下りもほぼ同じにしたので、経験に幅がなくなってしまった。乗っていて「面白くないな」と思っていたが、それは乗る側のマンネリのせいである。私の乗る時間の上り下りは、名古屋か大阪から新横浜から東京に出る「地方」人しか乗っていない。横浜の事業所に出張するパナソニックのサラリーマンとか、ディズニーランドに遊びに行く岐阜の農家の(複数の)家族とか。「東京」人は乗っていないのである。そもそも、働くために乗っている人が何だかグッと少なくなった。というわけで、12回目の今回で、この連載をお終いにしたい。

最後に、私の思い出の新幹線を。駅のエスカレーターの緑色のランプ。冷房のブオーンという音が響くプラットホーム。パタンと背もたれを折り返すリクライニングしない座席。トイレ横の紙コップで飲む冷水。まだ車庫で駅ではなかった、品川付近を通過するときの音楽。そして何より、名古屋駅で積み込まれ、まだ温かかった浜松自笑亭のうなぎ弁当。小学校2年生の夏休みの自由研究は、東海道線の駅と駅弁の地図だった。

中筋 直哉 について

法政大学社会学部教授。1966年神戸市生まれ。
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2 Responses to 「新幹線の社会学」終了します

  1. よしむら のコメント:

    研究書でも学部生向けの入門書でもない、一般向けの社会学の本が出たらいいな、と楽しみにしていたので、終わってしまうと聞いて少し残念です。オンラインでのやりとりで済むことも多くなって、移動が減ったこともあるのでしょうね。

    • 中筋 直哉 のコメント:

      コメントありがとうございます。おっしゃる通りですが、それができる筆力の持ち主はなかなか・・・。大人の知的好奇心に耐える社会学、少しずつ探究していきます。

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