素人国境学:沖ノ鳥島は日本固有の領土か?

今年から「地域社会学」を看板替えした「グローバル社会のローカリティ」、看板に恥じないよう「境界と辺境をめぐるゲーム」という回を設けて、国境や辺境の話をしている。そのとき資料として『復刻版教科書 帝国地図 大正9年』(帝国書院)を書画カメラで映写しているのだが、ふと「帝国委任統治地」(いわゆる南洋群島、今のミクロネシア)の地図を見ていて、赤い線で囲まれた委任統治領、元々ドイツ領ニューギニアだった海域の北西端に小さな島を見つけた。あれ、これって沖ノ鳥島?同じ地図の「南鳥島」ははっきりと赤い線の外側に書いてあるので歴とした日本領だが、この島は委任統治領だったのか。とすれば、第二次世界大戦後に返還(ドイツではないだろうから、アメリカ経由で将来のミクロネシア連邦に)されるはずのものだったのではないか。

ウィキペディアで「ドイツ領ニューギニア」を検索すると、当時のドイツの地図が掲載されていて、その北西端にはまぎれもなく「パレス・ヴェラ」というスペイン名が書かれている。スペイン船が沖ノ鳥島を見つけた時つけた名前だ。そもそも「ドイツ領ニューギニア」は、米西戦争に負けて貧乏になったスペインが新興国ドイツに売ったものだ。

同じウィキペディアの「沖ノ鳥島」の項には、日本の海防艦満洲がはじめて測量したのは大正11年と書いてある。ますます怪しくなってきた。

もっとも先ほどのドイツの地図の北東端には「ロス・ハルディン礁」なる岩礁も記されているが、これはたぶん探検界では有名な「幻の島」で実在しない。帝国地図にはこの岩礁は記されていない。

尖閣諸島や竹島ほど先鋭化していないが、沖ノ鳥島の帰属はアメリカを含む東アジア諸国の間で一致していない。領土としては日本でいいのだが、排他的経済水域は認めないというのが近隣諸国の言い分だ。もちろん日本政府は石原慎太郎でなくても対抗している。しかし、その根っこは、尖閣や竹島以上に怪しいものなのではないか。

ということで、今どき流行のボーダー・スタディーズ(国境学)の素人版でした。

 

中筋 直哉 について

法政大学社会学部教授。1966年神戸市生まれ。
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