尊敬する先輩たち3:大塚久雄

ちょうど「地域社会学」という大人数講義で大塚久雄の『共同体の基礎理論』を解説している。大塚久雄はたぶん私の頭の中の古典の書架の中心を占める学者だ。同じ戦後知識人でも、世の多くの人と違い、私の頭の中で丸山真男の占める場所はごく小さい。はじめて社会学を習った折原浩先生は何度も大塚批判を口にされた。それがかえって大塚を読むきっかけになった。わが師、蓮見音彦先生の『現代農村の社会理論』は『共同体の基礎理論』との格闘の成果である。しかしそれ以上に、私を魅了するのは、あの、妄想といってもいいような思念の力である。その力を示す1つの挿話が忘れがたい。著作集13巻で読めるが、戦時中足の病気が悪化したとき、マタイ伝の「目をくじりて捨てよ」の語を思い出して即切断を決意したという話である。身体に先行する思念の力こそは、大塚久雄の中心だったのではないだろうか。ちなみに、中野正剛や服部之総との交流の挿話も強い印象を残している。

中筋 直哉 について

法政大学社会学部教授。1966年神戸市生まれ。
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