一番都市らしかった場所:新宿中村屋の旧2階ルパを惜しむ

都心で夕方早く仕事が終わって、久しぶりに新宿経由で多摩の仮寓に戻るので、中村屋に寄ってインドカリーを食べて、紀伊國屋で本を買った。インドカリーの美味しさは変わらず、薬味のマンゴーチャツネが増量されていてうれしいのだが(入れすぎるとカリーの味を損なうのに、好きなのでつい入れすぎてしまう・・・バカ)、やはりこの地下2階の新店舗は馴染めない。昔の2階のルパでもう一度食べたい。

現実に体験した、私にとって一番都市らしい場所は、実は昔の2階のルパだった。混んでいるときも空いているときも店員の客さばきがまことによく、楽しく騒がしい感じが途切れない。また窓が開いているわけではないが、どこか階下の新宿通りの喧噪とつながっている感じがある。そんな外から新宿らしい色んな人が出入りする。しかしたいていはメニューも見ずに皆インドカリーを頼んで、もくもくと食べて去って行く。その雰囲気の楽しさが忘れられず、病気の時久しぶりに立ち寄ってみたら、地上も2階も店はなくなり、地下2階という「どん底」に移っていた。店員のていねいさは変わらないが、もう「DJポリス」のような群衆捌きを見ることはできない(学生自体に通った頃は、高橋とよ似の、実に客あしらいの上手な店員がいた)。私は地下の旧マ・シェーズでモカ・マタリを飲むのも好きだったので(よく近くに赤川次郎が座っていた)、二重の喪失感だ。

中村屋にも経営上の事情があるだろうし、店がまったくなくなってレトルトだけになるよりいいけれど、もう二度とあの雰囲気を楽しめないのは、ほんとうに悲しい。

中筋 直哉 について

法政大学社会学部教授。1966年神戸市生まれ。
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