徳野貞雄先生はすごい!:NHK「どんとこい、人口減少」を見る

録画していたNHKBSの番組「どんとこい、人口減少」を見た。この話題で75分はやや長く感じるが、農村出身の若いディレクターの、自分の身の上から考える姿勢が興味深かった。

さて、番組の中心は、ディレクター本人も含めたムラびとたちのワークショップなのだが、映像が始まった途端、?。見たことのある、松本零士の「男おいどん」のような顔がいる。ムラびとに知り合いはいないはずなんだけど・・。すぐに種明かしはなされ、指南役として呼ばれた農村社会学者の徳野貞雄先生だった。

指南役としての先生は、まったくすごい。編集の見せ方にもよるのだろうが、有名な「T型集落点検」の適用にはじまり、要所要所でワークショップを締め、議論を活性化していく。何度もこうした仕事に積極的に取り組んできた人でないとできないスゴ技だ。私も10年ほど無手勝流で農村に通ったので、身にしみて分かる。何より感動するのが、そのスゴ技は、もちろん徳野先生のお人柄にもよるのだけれど、それ以上に徳野先生の知を支える日本農村社会学に支えられていることだ。T型集落点検だって、鈴木栄太郎の『日本農村社会学原理』の現代版なのである。まったく自分の柄ではないが、徳野先生のように生きられれば、「社会学は世のため人のために役に立つ」と胸を張って言えるだろう。

もう1つ、私は師匠が黄金時代を生きた農村社会学者だから余計そう思うのだが、私が学生だったバブル時代、農村社会学への大方の社会学者の関心は限りなくゼロだった。地域社会学ですら若い新入会員が私ひとりで、懇親会で安原茂先生から「この学会の将来は君に懸かっているから」と酒を注がれたくらいだった。でも、まさにその時代に徳野先生はじめ、何人かの優れた農村社会学者が研鑽を積まれていたのである。私は今そうした先輩を何人も挙げることができる。ありがたいことだと言う他ない。

徳野先生とは一度だけメールのやりとりでご指導いただいたことがあるだけのお付き合いだが、そのときもご親切に私の農村研究を励ましてくださった。結局私は自分のなかの違和感を乗り越えられず、病気もあって農村から離れてしまったが、できれば退職までに、ご指導を胸にもう一度農村に関わってみたい。少なくとも社会調査法の授業を通してT型集落点検の面白さを伝えられたらと思う。

中筋 直哉 について

法政大学社会学部教授。1966年神戸市生まれ。
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2 Responses to 徳野貞雄先生はすごい!:NHK「どんとこい、人口減少」を見る

  1. ito のコメント:

    先日、YAHOOニュースで熊本の農村社会学者へのインタビューを見かけたとき、「農村社会学」がいまだ現役であることに驚きました。隣接分野では、80年代村落派と都市派がしのぎを削っていましたが、参照すべき社会学はというとほとんどが戦後直後のものばかり(先日述べました福武直とか有賀とか鈴木、古島敏雄あるいは中村吉治門下生など)で、おっしゃるように社会学の講座では「農村?何それおいしいの?」といった反応でした。社会調査論も量的データを扱うばかりで、わたしの報告のみ例外、というか場違いでした。ただ先生があのようなタバコの話をして下さったので。無意味ではなかったようです。

  2. 中筋 直哉 のコメント:

    itoさん、コメントありがとうございます。徳野先生の世代では、リゾート開発をテーマにされていた松村和則先生や、グリーンツーリズムの青木辰司先生、有機農業の桝潟俊子先生、林業に関心を寄せられてきた池田寛二先生など、多彩なキラ星世代だと思っています。その前のマルクス主義紋切り型世代よりずっといいかもしません。最近は鳥越皓之先生門下の植田今日子さんという方が活躍していますね。

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