東海道新幹線の基本統計量:新幹線の社会学2

録り溜めていたNHK総合「探検バクモン ドクターイエロー・新幹線特集」を見た。私くらい新幹線に乗っていると、ドクターイエローはあまり珍しくないし、見てもそれほど幸運に恵まれた気もしないが、でも多くの人がわくわくする気持ちは分かる。昔一度だけ米原駅で、911ディーゼル機関車を見たときの興奮を思い出す。事故復旧用だったが、開業当時は将来の貨物新幹線のための試作品の意味もあったのだろう。

番組のなかで、さりげなく、東海道新幹線の1日の運行本数360本、利用者数平均45万人という数字が挙げられていた。直感的に「そんなもんかな」と納得したが、ちょっと確かめてみたい。確かめるといってもJRに電話して詳細を確認するのではなくて、「そんなもんかな」という自分の直感を掘り下げてみたいのである。

45万を360で割ると1250、普通車1両が5席×20列で16両、グリーン車などを調整するとだいたい1500くらいの定員だろう。そこに平均1250、つまり8割以上乗っているのはスゴい。しかしよく考えればこれは東京新大阪間の延べ人数だから、名古屋で降りた私の席に乗ってくる新大阪行きの客で2人となるわけである。1列車あたり3000人以上運ぶ「のぞみ」もあれば、500人も運ばない「こだま」もあるだろう。いや、「こだま」は区間利用が多いから、意外とのべ乗車人員は多いかもしれない。

新幹線はだいたい6時から24時まで18時間動いているので、1時間あたり20本、上下で割ると10本、6分に1本の割合でダイヤが引かれていることになる。時速250kmの電車が6分、短いところでは3分間隔(約10km間隔で)で走っているところが、何といってもスゴいところだ。そんなだから新幹線は来たのにすぐ乗れるが、名古屋の地下鉄は、市営なので土日はとくに来ないので、私はあわてて帰ることになる。両者を合わせると、東京新大阪間2時間30分の間に上下50本走っているのだから、同じ時間に新幹線に乗っている「同行の群衆」は5万人くらいいるに違いない。まさに「群衆の居場所」である。

番組自体はNHKならではの豪華な取材だったが、ところどころに「日本、スゴイ」風の演出がなされるところが気になった。たしかに新幹線は事実としてスゴいけれど、それと今の日本とはほとんど何の関係もない。戦艦大和はスゴくても戦争には負けてしまったし、たくさん原発並べて「24時間戦える」ブラック・オフィスを照らしてみたけれど爆発してしまったし、何でも「日本、スゴイ」というのは聞いていて疲れる。

中筋 直哉 について

法政大学社会学部教授。1966年神戸市生まれ。
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1 Response to 東海道新幹線の基本統計量:新幹線の社会学2

  1. ito のコメント:

    新幹線の話題で「イエロー」という言葉が出てくると「黄害」を連想してしまうのは年齢のせいでしょうか?60年代から70年代にかけての公害の歴史もすでに忘れ去られているような気がしてなりません。
    当時空き地に車や冷蔵庫が捨てられており、かくれんぼでボンネットや冷蔵室に隠れて出てこられなくなった子どもたちの悲惨な最期は衝撃的でしたが・・・

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