新幹線サバイバル:新幹線の社会学4

別の学部に勤める中学高校の同級生に会議で会ったら、パートナーが関西で常勤職に就くので、新幹線で往復する生活になるとのことだった。たいへんなのは百も承知で、でも仲間ができてうれしい。他にもこの4月から関西の大学に転任し、新幹線で往来する先輩がいる。どちらも学齢期のお子さんがいて、いろいろ難しいことがあるかもしれないが、でも仲間ができてうれしい。経験していない人に同情してもらえるのもうれしいが、なかなか細かい苦労は分かってもらえないし、分かるはずもないのだから。

細かい苦労のひとつが新幹線車内の環境である。それは昔に比べれば、空調機械の性能は格段に向上した。が、やはり「悪貨は良貨を駆逐する」というように、鈍感な客に合わせてしまうのだろう。夏は寒く、冬は暑い。また夏の朝早い便、空いている便はとくに寒い。座っていると、とくに下半身が冷えてくるので、夏でも温熱型の下着か、サルマタが欠かせない。一方冬の暑い方は汗をかいてしまって、下車すると冷やしてしまう。

野口整体的には(野口晴哉『風邪の効用』ちくま文庫)、実は寒いときも暑いときも問題なのが乾燥である。お肌が心配というのではなくて、体中内側から乾いてしまい、水を受け付けなくなってしまうのだ。そんなときは冷たい水をちびちび飲むのがいいそうだ。上手に飲まないとトイレばかり近くなって、ちっとも潤ってこない上、干からびた体になってしまう。夏の寒さには、これに加えてマホービンに温かい飲み物を入れておくと、冷えて気持ちが暗くなったときに効く。

これも野口整体的には、ビールでは上手に飲まないと乾燥は補えない。さらに飲んでうたた寝するのは、冷えを倍増させて最悪だ。

さらにこれも野口整体的には、新幹線で子どもが泣きわめくのは、冷えた体を温めるためだそうだ。泣いて動いて自分で温めるだけ、子どもは整っているのである。

もう1つ、新横浜から名古屋の1時間20分間、窓の開かない密室に大勢で閉じ込められるのも、ほんとうは精神衛生上よくないにちがいない。そんなことをいうなら欧州便の飛行機はそんなものじゃないということは分かるけれど(昔学生時代に乗った英国航空のエコノミー、ワールドトラベラーズはほとんど奴隷船だった)、悪いのと比較しても意味がない。催さなくても1回はトイレに立つのが精神衛生上いいかもしれない。

1つだけいいことを。新幹線車中にいる間に、ビールを飲むにしろ、好きな動画を見るにしろ、仕事の垢を落として、家族の待つ家にはきれいな体で帰りましょう。それができる場所でもある。

中筋 直哉 について

法政大学社会学部教授。1966年神戸市生まれ。
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