私の社会学信条

「人間の本質(human nature)」という言葉があります。これは近世の哲学者D.ヒュームが広め、今では心理学者や言語学者や社会生物学者が自らの研究の究極の目標を表すのによく使います。この言葉は、人間は形質的にだけでなく精神的にも社会的にも共通の性質を持っているという意味と、その性質は人間の内側(形質)に起源を持つという意味を含んでいます。社会学者としての私の究極の目標は、この「人間の本質」という考え方を批判することです。人間には形質ですら共通の性質などないし、仮に何か共通の性質があったとしても、それは人間の形質に由来するものではない、ということを科学的な思考を通して確かめたい、それが私の願いです。高校生の頃に魅せられたF.ニーチェの『ツァラトゥストラはこう言った』のなかに、「まだ人の足踏みいれたことのない幾千という小みちがある。幾千という健康の種類、隠れた生の小島がある。人間と人間の住む大地は、いまだに汲みつくされず、発見しつくされていない。」(岩波文庫、上130頁)という言葉がありました。それを発見するのが私の仕事だと思っています。