900番教室の思い出など:森村泰昌「エゴオブスキュラ2020」展から

品川御殿山の原美術館で開かれている森村泰昌「エゴオブスキュラ2020」展を見る。午後から都心で仕事なのに、11時開場でむっちゃあわただしい。でも小1時間の映像作品も見られてよかった。

さて、映像のなかでマリリン・モンローとしての森村は、東大駒場キャンパスの900番教室(森村は講堂と紹介しており、実際旧制一高時代は講堂であったのだが、私には教室である)の小林康夫教授の講義にちん入して『七年目の浮気』を演じるが、ファンであるはずの私は森村の問題提起(三島由紀夫とマリリンモンローの「とりかえばや」いや、「私たち、入れ替わってる!」)より、900番教室に気を取られていた。こんなに小さかったっけ・・・。

もう目の前の映像を見ていない。学生もまばらな秋の講義、遠くの教壇上で小さく折原浩先生先生が淡々と話されているのが、最後列に座った私の眠い目にぼんやりと映っている。あるいは、蒸し暑い梅雨の深夜にわたる自治委員会(クラス代表が集まる、議題は原理研問題だったかな?)で、中休みに売られる「もっくもっく(だったかな)」の唐揚げ弁当を黙々とほおばる私(そこの背の高い学友の君!)。

専修大学で「社会史」を担当した94年以来四半世紀にわたって大教室で講義してきた今の私には、900番教室はまるで小さな宝石箱のようだ。そこに入っていたはずの19歳の私という宝石は、磨いてみればただの石ころだった。石ころにはボール箱がお似合いだ。でも、今私の前に座っている学生さんたちは磨けば光る宝石かもしれない。来年度はちょっと気持ちを変えて、大教室棟に向かってみよう。

中筋 直哉 について

法政大学社会学部教授。1966年神戸市生まれ。
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