野蛮としてのイエ社会:NHKETVで能「烏帽子折」を見る

NHKETVで能「烏帽子折」を見る。前半はいわゆるエエ話で漫然と見ていたが、後半は主人公の少年義経が10人くらいの盗賊を次々と斬殺した揚げ句、最後は老いた頭領熊坂長範を真っ二つ、ってお前はウルトラセブンか!能にも倫理指定が必要。やはり殺伐とした武士たちの芸能だ。

前半義経幼少の頃の恩人、鎌田政清の妹が登場。名乗りは「あこやの前」。ええっ、出世景清の愛人「阿古屋」?。話が適当すぎ。「あこや」って、何かの象徴なのかな。あるいは永遠の女「八百比丘尼」? ウィキペディアで調べると、愛知県阿久比町の古名とそっけない。まあ、阿久比から政清と主君義朝が殺された野間大坊までは至近だが。

専門的には、『文明としてのイエ社会』(村上泰亮他)と『野蛮としてのイエ社会』(関曠野)の交差点にあるような話だった。

なお、番組前半は狂言「居杭」。かわいいから殴るという、きわめて現代的なテーマ。殴られる子ども(演者が子どもなのだが、本来は子どもではなくコかもしれない)が大人(オヤ)たちに復讐する。解説では、この狂言を文禄の太閤秀吉が内府家康と加賀宰相利家と3人で演じた記録があるという。どの役を誰が演じたのだろう。私の妄想では、やはり秀吉が殴られる子どもを演じたにちがいない。もう半ば狂気だったのだろう。しかし三成ら見ていた連中は凍り付いただろうな。いえいえ、そんな細い神経ではとても官僚は務まりませんよ。

中筋 直哉 について

法政大学社会学部教授。1966年神戸市生まれ。
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