ああ、アルバンベルクですね:亡き同僚の思い出

「ああ、アルバンベルク(カルテット)ですね。」CDウォークマンから取り出したCDをみて、隣席の同僚がつぶやいた。「定番ですね」というニュアンスを感じて、つい「安売りしてたので」と韜晦してしまった。

社会人大学院の担当になって初めての入試。1期生の入試は転任前だったから2期生が初めて。大手音楽コンテンツ会社の部長さんが、仕事の実績として自分がプロデュースしたCDを提出してきた。CDラジカセが事務になく、ちょうど持ち合わせていた私のCDウォークマンを提供した。それで聴きかけのCDを取り出したのである。回し聞きしたものの地方のバンドを発掘するというのがアカデミシャンたちにはピンとこない。地域社会学が専門の私も同様。でも都市のサブカルチャーが専門の同僚は当然といった顔で「なかなかいいですね」と言った。

同僚は無理矢理このプロジェクトに参加させられたらしく、完成年次を過ぎるとさっさと学部に戻っていった。それからは学科がちがうせいもあって一緒に仕事をすることはなかった。また彼がいるので、学部の授業では建築や都市のサブカルチャーの話はしないように心掛けていた。

部長さん、指導教員とは色々あったけど無事優秀な成績で修了し、さらに東大の博士課程に進んで博士号を取得。母校に戻って今は人気教授である。同僚や私よりずっと有名になった。

http://www.sairyusha.co.jp/bd/isbn978-4-7791-1508-0.html

同僚は在外研究中に病を得、昨年亡くなった。私より1つ年長だからまだまだ先のある人生、気の毒でならない。最初に触れたCD「ラズモフスキー第2番」を寝しなに聞いていて、ふと思い出した。あらためて合掌。

中筋 直哉 について

法政大学社会学部教授。1966年神戸市生まれ。
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