卵だって立派な食材:学生時代の道楽旅行の思い出

先便で近代料理の巨人、A.エスコフィエについて書いたので、地元の図書館で彼の著書『フランス料理の真髄』(原 題 ”Ma Cuisine”、邦訳は小野正吉監修、1974)を借りてきた。名古屋市の図書館は予約すれば区の図書館の臨時窓口で受け取れる仕組み。

たまたま開いた頁が卵料理それも冷製卵料理で、読み進めると昔の記憶が蘇ってきた。

大学院生時代、「食いしん坊の師匠」に連れられてはじめてのフランス旅行に出かけた。もちろん食いしん坊旅行。レストランの3軒目、J.ロブションがやっていた「ジャマン」を訪れた。オードブルを選ぶとき、ふとへそ曲がりの性根がでて oeuf(卵)を頼んでみようと思った。日本でもレストランで卵料理なんか食べたことない。メニューにはオムレツもあったが、 oeuf mollet  というのが目に入った。文庫クセジュの『フランス料理』で予習していったのに mollet  の意味が出てこない。えいやっと注文したら(けっこう高かったので)、出てきたのはウスターソースが張られた皿の真ん中に目玉焼き!というのは見間違いで、実際はトリュフのゼリーの真ん中にショーフロワソースをまとった半熟卵が落としてあるのだった。これがむっちゃ旨い。そもそもトリュフ自体がはじめて。卵と合わせるということはおぼろげに知っていたけど。

そのときは、ロブションの創作料理だと思い込んだが、今目の前にあるエスコフィエのルセットそのままだ。ただ原典の方のゼリーは家禽製で、トリュフは卵の上に薄切り1枚を飾る、となっている。どの世界でも古典は大切に学ばれてきたのだな、とあらためて思った。

トリュフは無理だけど、マイタケを代用して作ってみようかな。

中筋 直哉 について

法政大学社会学部教授。1966年神戸市生まれ。
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