長く多摩の研究室に行けず、自宅の本を増やしたくないので、市の図書館で昔の本を借りて勉強している。というのはエエ格好しいで、昔大学図書館の職員(著名なI名誉教授の奥様)にゼミ生の前で「中筋先生は図書館にあまりいらっしゃいませんねえ」と皮肉られたほどの不勉強者なのだ。
ところが借りてくる専門書にどれも書き込み、傍線がある。専門書だから専門家が読むのだろう。ダメな専門家やな。この本もそうだった。加藤榮一『幕藩制国家の形成と外国貿易』(1993,校倉書房)。この間NHKスペシャルで『戦国』というのをやっていて、出てきたシカゴ大学のポメランツとかいう歴史家があまりに「パチモン」だったので毒気に当てられ、解毒剤にと借りてきた。幸いとてもいい本で、冒頭の数ページでたちまち解毒。連合オランダ東インド会社の職制と訳語の採用について詳説してあった。
昔大学図書館の本に書き込んだり、傍線を引いたりする悪い先輩がいて非難したら、「俺が引いた線でよく分かるようになっただろう」と開き直られた。その先輩は今母校の教授である。相変わらず大学図書館の本に線を引いているのだろうか。
今日の傍線はダメな典型だった。先行研究のレビューの要約部分にしか引いていない。この本の魅力は中盤の、平戸に往来するオランダ船の積荷の内訳の分析にあるのにな。中国船から略奪した生糸。オランダ人、ただの海賊やで。でも秀忠に怒られて、シュン。