ストラビンスキー頌

ストラビンスキー没後50年だそうである。亡父が持っていた『リーダーズ・ダイジェスト世界名曲集』というレコードセットのトリがストラビンスキーで、解説に大きくピカソの描いた肖像画が掲げてあった。その素晴らしいこと!釣られて音楽も聴いてみたら、冒頭のファゴットからもうメロメロ。私にとってクラシック音楽で1曲と言えば、ズバリ『春の祭典』である。はじめて自分で買ったのはショルティの廉価版。音が隅々まで澄んでいた。今はブーレーズのグラモフォンの方。この間You Tube でアルゲリッチバアさんとバレンボイムジイさんが連弾しているのを見つけたが、これもよかった。

巷間語られる初演のスキャンダルは饅頭の皮に過ぎず、この曲の餡はそのクラシックさだ。冒頭の数分間など、ハイドンが書いた木管八重奏曲といってもいいくらいだ。 You Tube だと総譜めくりつきの映像も見られるが、実に整然としていて、私のような小学校程度の楽譜リテラシーでも十分読んで楽しめる。ただ、ストラビンスキーをこの曲ばかりで語るのはどうか。『兵士の物語』や『エディプズ王』ももっと取り上げたがいいと思う。

26年前のイタリア新婚旅行、「死の文化」を研究する連れ合いはヴェネチアのサン・ミケーレ島を見たいという。全部墓地の島である。それならストラビンスキーの墓に詣でよう。それは島の片隅の「ギリシア人たちの墓地」すなわち正教徒用の墓地にあった。冬の海風にさらされたそれは、言いようもないほど寂しいものだった。

葬式で流してほしい曲という言い方があるが、私は(葬式はどうでもいいが)「パストラール(声のないのがいい)」。「そりゃ『怪獣大戦争マーチ』でしょう」って、ちがうちがう!

 

中筋 直哉 について

法政大学社会学部教授。1966年神戸市生まれ。
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