良き師よき友:松田素二先生の退官記念出版の合評会に連なって

社会人大学院のZoom面談の合間に、社会動態研究所が開催した松田素二先生の退官記念出版『日常的実践の社会人間学』(2021,山代印刷出版部)の合評会を覗かせていただいた。松田先生とは残念ながらご縁がなく、今回はじめてお話をうかがったのである。司会は今活躍中の石岡丈昇先生と打越正行先生。ふと見ると40人近い参会者で私より年長なのは松田先生含め4人くらいか、年はとりたくないものです。

松田先生の『抵抗する都市』(1999,岩波書店)に接したとき、私の浅薄な研究とは全く異なる豊かなフィールドワークの成果ではあるものの、どこかで関わりそうな気がしてうれしかった記憶がある。一方で、私の閉じて凝り固まった思考とは全く異なる、進み広がっていく思考も魅力だった。今日も、とくに後半の討論のなかでそうした先生の魅力を再確認することができた。

松田先生とそのお弟子さんたち、影響を受けた方たちとの関係は、ちょうど私の師匠たちと私の関係より約10年後にズレたかたちになる。そのこともしみじみと感じられた。たとえば伝説化して語られていた鳥越皓之先生は、私にとってはまだ伝説以前の、都賀川の住民運動を調査されていた若々しいイメージのままなのである。さらに神代の昔の中野卓先生は「なかのすぐる」になっていた(「たかし」です!)。この10年のズレはいろいろな意味で大きいのではないか。

でも、一定の緊張感を保ちつつも「〇〇君」とひとしく親しく先生に呼びかけられるお弟子さんたちを、師弟関係をしくじり、「私は東大の初めの頃、弟子育てに失敗した」と師匠に書かれた私はうらやましく、また寂しく思った。

中筋 直哉 について

法政大学社会学部教授。1966年神戸市生まれ。
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