故郷の味を求めて:夏休みに読む本

まだ夏休みではないけれど夏休みに読む本を借りてきた。『フランスパン・世界のパン 本格製パン技術:ドンクが教える本格派フランスパンと世界のパン作り』(2001,旭屋出版)。今から脱アカしてパン屋になろうというのではない。子どもの頃から大好きな神戸三宮センター街のパン屋「ドンク」のパリジャンの味を思い出したくて。

子どもの頃から?読んでみるとドンクがフィリップ・ビゴの指導の下フランスパンの専門工場をはじめたのは1965年だったそうだ。まさにドンクのパンは私とほぼ同い年なのである。大学出たての新しもの好きの叔父がよく買ってきたのは新しかったからなのだ。

大学受験の時、青山通りのホテルを予約してくれた叔父は、ここはドンクのパンが朝食に出るからなと言い添えた。その時はじめて東京にもドンクがあることを知った。青山店は1966年開店。でも朝食べたクロワッサンは神戸のドンクと違っていた、ような気がしただけで、さすがの食いしん坊も受験で縮みあがって味も何もなかったからにちがいない。

大学に入ってフランス語を習うと「ドンク」という言葉が出てきた。donc、 ああここから取ったのか。でもよく見てみるとドンクはdonq。本当はドン・キホーテのようにフランスパン作りに挑戦するという意味らしい。

いちばん驚いたのはドンクがまだ藤井パンだった1930年から戦争でいったん廃業するまでの間店を開いていた場所が、神戸市兵庫区和田宮通6丁目だったということ。そこオヤジが死んだ三菱神戸病院やん。小学生時代を疎開先の丹波篠山で過ごした父は知らなかっただろうが、祖父母は知っていただろうか。祖母は「食パンはバターたっぷりのドンクのやな」とつねづね言っていた。

中筋 直哉 について

法政大学社会学部教授。1966年神戸市生まれ。
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