文化財の苦み:『アイヌのくらし』展を見ながら

最寄り駅から徒歩30分、しかもローカル線。新幹線の駅からバスでやはり30分。足の悪さは全国一ではないかと思われる群馬県立歴史博物館で『アイヌのくらし』展を見る。道立北海道博物館からの巡回。道博の方はボーカルグループ「マレウレウ」のマユンキキさんのツィッターで知って(マユンキキさんの寄稿がすばらしい)、図録は既に取り寄せていたが、百聞は一見に如かずで八高線をはるばる乗って訪れた。

見に来てよかった。群馬県立歴史博物館は近くで発掘された前方後円墳の副葬品(ハニワと金銅の装飾馬具)が圧巻なのだが、それと隣り合わせ(部屋は別)の展示なのである。一方は古代の豪族の武威を誇示する、触れ込み通り「全部ホンモノで国宝」。それに対して『アイヌのくらし』展の展示品に国宝は1つもない。そのうえ「NHKの取材に応じて作った」モノなどもあってオーセンシティにかなり難があるのだ。ところが皮肉なことに、古墳の国宝は群馬県の所有だが、アイヌのモノは国博、民博、道博、北大博物館がほどんど、つまり国有なのである。これはいったいどういう事態なのだ?

征服者の側である他ない私にとってこれほど苦いのに、征服された側から見ればどれほど苦いことだろう。その意味でマユンキキさんの図録への寄稿はいっそう意義深いものなのである。この項続きます(『アイヌのくらし』展の話題ではありません)。

中筋 直哉 について

法政大学社会学部教授。1966年神戸市生まれ。
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