映画を見に行くたびに、高校時代の1人の友人を思い出す。彼とは特に親しかったわけではないし、彼も私を親しい友人とは思っていなかっただろう。でも、映画を見に行くたびに、私は彼の笑顔を思い出す。彼は映画好きで、S.スピルバーグの『E.T.』が封切られたときは、学校をサボって初回から見に行き、私たちが映画館に着いたときには、もう目を真っ赤に腫らしていた。ある時、「中筋は何で東京に行きたいの?」と聞かれた。彼になら話していい気がして、「実は『日活アクション』を見たいんだ。東京なら見られるだろうから」と答えた。その頃私は小林信彦の『日本の喜劇人』なかでも宍戸錠の章に魅了されていて、DVDもネット配信もない時代なので、東京の名画座に頼る他なかったのだ。すると友人は、「それは楽しみだな、でも一緒に岡本喜八の『独立愚連隊』も見るといいよ」と教えてくれた。もちろん私は『独立愚連隊』も岡本喜八も知らなかった(『英霊たちの応援歌』はテレビで見たことがあったが、監督を識別していなかった)。上京してから、私は毎週のように大井武蔵野館に通って『日活アクション』を見続け、また『独立愚連隊』も見た。もっとも私が好きになったのは『江分利満氏の優雅な生活』だったが(これは学生にも薦めている)。一方上京以来、地元に残った彼とは会っていない。きっともう二度と会うことはない気がする。でも、映画を見るとき、いつも隣に彼の笑顔があるような気がする。
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学問の本以外で、私の血肉となっているのは、この『日本の喜劇人』と玉村豊男『パリ 旅の雑学ノート』だ。