正月の新聞記事で一番面白かったのは、AI碁に関する井山裕太六冠のコメントである。私の取っている朝日新聞の3日朝刊にはアルファ碁の棋譜について「部分的なヨミではつねに正解を打っている感じでもなく、まだまだ人間の方が上かと思いましたが、人間的にいう大局観というのか、部分的に最善でなくても全体では遅れていない、むしろリードしている局面が多かったように感じました」とあった。また5日夕刊にはネット上のMasterについて「一手一手の質が高く、勝ちに向かって突き進んでいく印象」とあった。
専門でもないのに、私はずっと「合理的選択」という概念にこだわっていて、講義でも取り上げるし、自分の研究でもつねに頭の片隅に置いてきた。それを考えていく際、H.サイモンやD.カーネマンの「限定合理性」では何かせせこましくて飽き足らなかったが、井山六冠のコメントはそれを超える面白さがある。合理性を定める時空間の範囲のズレが、合理性の包括力の大きさや強さを決めるということをいっているのだと思う。しかし、何といっても素人にも伝わってくる表現力がすごいと思う。当分井山六冠の発言から目を離せない。
と言っても囲碁は全然素人で、上手だった義父から基本的なルールを習ったところで、義父が脳卒中で倒れてしまい、それ以上上達しなかったのである。